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第26話 私ならいいのに

作者: 板野かな
last update 公開日: 2026-09-22 18:00:20

 翌朝になっても、麗香の耳にはさくの声が残っていた。

『……この香り』

『……まさか』

 あれは聞き間違いではない。

 自分だけが、何かを思い出したわけではなかったのだ。

 朝餉の席で向かいに座る朔を、麗香はそっと窺う。

 いつもと変わらない顔で新聞を読んでいる。

 けれど、頁をめくる手には昨日の傷を覆う包帯が巻かれていた。

「……お手は、痛みませんか」

「ああ。この程度なら問題ない」

「そうですか」

 会話が途切れる。

 昨日までなら、それでよかった。

 けれど今は、聞きたいことがある。

 ――朔様。

 昨日、何を感じたのですか。

 もしかして、あの夜――。

「麗香」

「はいっ」

「どうした」

「……いいえ」

 麗香は視線

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